水巻町図書館の《炭鉱就労者の像》と《二人の青年》
昨日は水巻町図書館(福岡県水巻町)で開催された「郷土の版画家 没後十年 うえだひろし作品展」を紹介したが、図書館にある彼以外の炭鉱関連作品2点にも改めて触れておく。ひとつは駐車場の傍らにある坑夫像(写真左)。福岡の炭鉱クラスタの間では有名ですね。 pic.twitter.com/kPsqKAR4Cz
— タケ (@take_all_a) February 23, 2022
この立像は《炭鉱就労者の像》または《躍進の像》という。戦時中に国策で結成された美術団体「軍需生産美術推進隊」の一員だった圓鍔勝三(えんつばかつぞう)の作でコンクリート製。 pic.twitter.com/z2DKZj61wV
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軍需生産美術推進隊のメンバーが作った坑夫像は全国に数点ほど現存し、いずれもコンクリート像である。普通は石像やブロンズ像とするもので、耐久性に劣るコンクリートはあまり適切な素材と思えないが、昭和の戦前から戦後にかけてコンクリート像が盛んに作られた時期があったという。 pic.twitter.com/qmjo6pBDbm
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長年風雨に曝されている割に、彫刻のディテールは保たれているようだ。 pic.twitter.com/LwN9cOLq2b
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「産業戦士」の表現には工業生産物であるコンクリートが相応しいという趣旨だろうか。軍需生産美術推進隊による作品の他にも、福岡県内にコンクリートの坑夫像が私が知る範囲で3体存在する。 pic.twitter.com/VBOwBPxNG7
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現地のキャプション。当初、坑夫像は日本炭礦(日炭)高松炭鉱 第2坑の坑口付近に置かれ、閉山後に炭鉱事務所の敷地内に移設、水巻町に寄贈されて現在の位置に移された。
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参考:水巻町歴史資料館のページ https://t.co/Hpax2ycDYm pic.twitter.com/U47Jhf9sV8
作者の圓鍔勝三は彫刻界の重鎮で、出身地の広島県尾道市に圓鍔勝三彫刻美術館がある。https://t.co/J3a9YnvUkR
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また、「炭鉱就労者の像の美術的価値」という講演会が3/6に水巻町図書館で開催とのこと。興味ある方はぜひどうぞ。 pic.twitter.com/WsDwJutNrw
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もうひとつの作品は、水巻町図書館の閲覧室に展示されている《二人の青年》という木彫レリーフだ。今回、図書館を訪れて初めて存在に気が付いた。 pic.twitter.com/ncIKwzQNn0
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《二人の青年》のキャプション。一色五郎、1930・S5の作で第11回帝展入選作品。高松炭鉱 朳(えぶり)クラブの玄関ホールに掲げてあったという。ただ、日炭がどういう経緯で本作を入手したかは書かれていない。 pic.twitter.com/76l0b9oVH6
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どう見ても炭鉱労働者とは縁が遠そうな人物像である。都会の生活を享受する若者達といった印象。なぜこれが炭鉱会社のクラブハウスに飾られたのだろう。それとも私の解釈が間違っているのか。 pic.twitter.com/91QtDMdn7Q
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下の記事によると、一色五郎は1903・M36に現在の茨城県土浦市に生まれる。1939・S14に発足した陸軍美術協会の一員として時局に沿った作品を多く制作したとのこと。
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NEWSつくば >《霞月楼コレクション》8 一色五郎 地域を愛し地域に愛された彫刻家 https://t.co/Q1MIXpm4GC
圓鍔勝三と同様に一色五郎も国策美術団体と関わりがあったわけだが、しかし《二人の青年》は陸軍美術協会発足以前の制作で、国威発揚どころか軟弱と批判されそうな作品だ。推測だが日炭が作品の購入を通じて彼を経済的に支援した?
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