福岡県立美術館喫茶室のリニューアルオープンと九州大学の什器
#福岡県立美術館 (福岡市中央区)の喫茶室が閉店したのは2021年10月末のこと。近隣にも飲食店はあるものの、やはり館内のカフェで美術鑑賞した余韻に浸りたいなと惜しんでいたら、意外に早く2022年1月にリニューアルオープンした。 pic.twitter.com/MOorlJFcqU
— タケ (@take_all_a) February 2, 2022
というわけで、福岡県美で開催中の「豊福知徳寄贈記念展」は既に観ていたが、喫茶室だけを目的に再訪した。たぶん以前とは経営者が替わったと思うけどその辺の事情は未確認。 pic.twitter.com/NgooWwmV3D
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このマークは以前は無かったよね? ベレー帽をかぶったスズメが片足で絵筆を掴んでいる。カワイイw pic.twitter.com/ifqMa7Mr15
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ドリンクメニュー。豆乳系の充実ぶりが気になるがそれは後日の楽しみにとっておいて、まずはメニュートップのトアルコトラジコーヒー(インドネシア・スラウェシ島のトラジャ地方産のコーヒー豆)を飲んでみた。 pic.twitter.com/5eRDDStR4e
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フードは今のところスイーツやパンといった軽食のみ。全てがメニューに載っているわけではなく、カウンターのケースを直接見て選んだ方が早い。今回は小振りのカップに入った自家製プリンを注文。お茶請けに丁度いい。 pic.twitter.com/4x074Haf71
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ところで、喫茶室のためだけに県美を訪れたのは訳がある。リニューアル後の店内に置かれた木製什器は九州大学から借りたとの情報を得たからだ。この写真ではテーブル代わりの机がそれ。椅子については分からない。 pic.twitter.com/Dv5YPO9WUm
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リニューアル前の喫茶室で使われたいたテーブルセット(写真手前)も残っていて、九州大学の机の方には先客がいたのでこの日は座らなかった。書架も九大の什器だ。 pic.twitter.com/F2099PFl8w
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先客が退出して次のお客が来る前に素早く撮影(もちろん店員さんの許可は得ている)。なぜ私がこんなに張り切っているかというと、実はこれらは戦前の九州帝国大学で使われていた歴史的に貴重な什器なのである。 pic.twitter.com/x47xJoIJ0n
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私は部外者だが分かる範囲で簡単に事情を説明しよう。九州大学は、各学部があった箱崎キャンパス(福岡市東区)や教養課程の六本松キャンパス(中央区)に分散したキャンパスを西区に建設した伊都キャンパスに統合した。
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総合大学を一気に移転するのはまず不可能であり、移転は2005・H17年から学部別に段階的に行われて2018・H30年に完了。移転後の箱崎・六本松両キャンパス跡地は再開発され、六本松の方は完了した。
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なお、医学系学部と付属病院がある馬出(まいだし)キャンパス(東区)、芸術工学部(九大合併前の九州芸工大)がある大橋キャンパス(南区)、総合理工学府がある筑紫キャンパス(福岡県春日市)は存続している。
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そして箱崎キャンパスについては、九州帝国大学としてまず工科大学(現在の工学部)が1911・M44に開学して以来、多数の校舎群が建設されたが、工学部本館(1枚目)、本部第一庁舎(2枚目)、同第三庁舎(3枚目)、門衛所(4枚目)、正門を残して他は全て解体された。 pic.twitter.com/m5xsdLdc0r
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現在は再開発の初期段階でインフラや区画を整備中だ。移転費用の捻出には跡地を売却するしかなかったにせよ、近代建築が少ない福岡市にとって箱崎キャンパス校舎群の解体は大変な損失で、保存建築をもう少し増やせなかったのかと… (ry pic.twitter.com/gqxReyw06K
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工学部本館とその周辺を保存エリアにするなら近隣の法文学部まで範囲を広げて… 再開発で移転する箱崎中学校の予定地にあった建築は解体せず利活用する選択肢が… (ry えー、文句を言うとキリがないのでこの辺にしておきます。 pic.twitter.com/o1dIrW8THl
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九州大学箱崎キャンパスの模型。九州大学本部第一庁舎にて(2019年の公開イベントで撮影)。 pic.twitter.com/TRC994nOAd
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さてようやく本題に入ると、九大では戦前に製作された木製什器が現代まで使われていた。近代の什器がまとまった形で現存するのは全国的に極めて稀で貴重らしい。しかし、移転の際に大半が廃棄処分となる。写真は旧工学部本館の廊下。 pic.twitter.com/a3HoAViakM
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九州大学の附属博物館である九州大学総合研究博物館は、歴史的・学術的に貴重な什器が失われる事態を危惧し、廃棄される什器のレスキューを移転期間中、継続的に行ってきた。とはいえ、回収・保存できたのは全体のごく一部とのこと。 pic.twitter.com/OnDSOJesY9
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また、同博物館は保存だけでなく在野(民間)に什器を貸し出して利用してもらう活動も行っている。福岡県立美術館喫茶室のケースもこの「在野保存」の一環。ツイート中に市原さんから、九州大学総合研究博物館のFBに今回の貸し出しに関する投稿があると教えていただいた。https://t.co/NE7Swjaaux
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什器の歴史的価値やレスキュー、在野保存の概要は次のリンク先3点を参照されたい。
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READYFOR:歴史的な木製学校家具を救え!九大什器保全活用プロジェクト https://t.co/ktoxl0FqsP
注:クラウドファンディングは終了
九州大学総合研究博物館ニュース27号 https://t.co/YYC9dtJTEB 注:PDF
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九州大学総合研究博物館研究報告第15-16合併号「九州大学の歴史的木製什器の保存と活用の新たなあり方にむけて」三島美佐子 https://t.co/mURfmxVvc2注:PDF
ただ、今のところ喫茶室にキャプション(説明文)の掲示が無く、事情を知らないと「なんか古くさい什器だなあ」という印象で終わってしまう。そこで僭越ながら私が一連の経緯を述べた次第である。 pic.twitter.com/JenkEGFj0t
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喫茶室の什器の紹介に戻ろう。大学の備品だったので番号を記したプレートや書き込みがある。九大には備品台帳や図面などの書類も残っていて現物と照合できる。このことも重要なポイントだ。 pic.twitter.com/8hhRzy4KOK
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「九州大学演習林」のシール。福岡県民には篠栗町の九大演習林が “インスタ映えスポット” として有名だが、他にも複数の演習林があり、これがどこの備品だったかは分からない。演習林から箱崎キャンパスの農学部に移されたものだろうか。 pic.twitter.com/GGqzSkIeC7
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書架。福岡県美の図書室にある美術関連の書籍や過去に開催した展示会の図録の一部が、こちらに置かれている。 pic.twitter.com/8kAaampL2i
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この書架の備品シール。九大の医学部付属病院から教育学部に移ったものらしい。 pic.twitter.com/nRyoLtzGtf
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別の書架には「九州帝國大學醫科大學 耳鼻咽喉科教室」のプレートが! 1911・M44に九州帝国大学が創立したときは医科大学と工科大学という名称で、1919・T8に医学部と工学部に改称した。したがってこれは九州帝大最初期の什器か。よくぞ救出したなあ。 pic.twitter.com/lI27j272hj
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その他の什器類。店内をやたら歩き回って写真を撮りまくるとお店に迷惑なので、程々に控えた。 pic.twitter.com/Ha9g4IFMfk
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補足すると、九州大学総合研究博物館は、箱崎キャンパスの旧工学部本館をベースに九州大学が収集してきた学術標本の所蔵・保存・研究・公開などの活動を行う組織である。
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公式サイト https://t.co/4Fk67jMizR
旧工学部本館にある常設展示室は学外の者にも開かれていて、非公開の貴重な学術標本もときどき開催されるイベントで見ることができたが、コロナ禍のせいで大学関係者以外は非公開、イベントも2019年を最後に行われていない。 pic.twitter.com/VFjaPHxnVb
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イベントで見学した旧工学部本館に所蔵されている学術標本。標本とそれを収める什器は廃棄の対象ではない。 pic.twitter.com/lsLLSUuKc1
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廃棄から救出した昔の椅子のリペアとその解説パネル。 pic.twitter.com/UQhu1ufefc
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