博多駅筑紫口駅前広場のモニュメント
博多駅(福岡市博多区)の出入り口は、西の在来線側を博多口、東の新幹線側を筑紫口という。双方の駅前広場のうち、博多口側は駅ビルの建て替えに併せて2010年代に再整備された(写真)。 pic.twitter.com/MaDaoPC6Zo
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一方、筑紫口の駅前広場(写真)は1986・S61(国鉄分割民営化の前年)に改修されて以来、ほとんど変わっていなかったが、福岡市は2019・R1年に再整備計画を発表。当初は2021・R3年春に完了する予定だった。 pic.twitter.com/yRRA1jwWYd
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しかし、コロナ禍の影響か他の事情か理由は分からないが、再整備工事が始まらないまましばらく時間が経過。2021年5月、ようやく福岡市は6月上旬から工事に着手することと完成後のパースを発表した。 pic.twitter.com/j7OOxQDNn3
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これがその完成パース。福岡市公式サイトから引用(下記リンク先参照)。
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福岡市 > 博多駅筑紫口駅前広場のリニューアル工事に着手します https://t.co/qMzlHnWhYK pic.twitter.com/DOuBMIa8wB
見たところ、基本的に既設広場のリニューアルにとどまっている。広場を使いながらの工事になる上、周辺道路との接続を考慮すると、大幅な変更は難しいのだろう。広場のほぼ全周に庇が設置され、雨天時に車を乗降する際のストレスが減るのはありがたい。
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タクシーとバスの駐車台数はほぼ現状維持かな。数年前に開業したHEARTSバスステーション博多への機能分散によって、筑紫口のバスプールが縮小されて歩行者空間が広がるのではと期待していたが、そうはならなかった。
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そして、再整備後は車がホテルクリオコート博多の脇から南(写真右手)に抜けられなくなる。ここにも庇が描かれているということは、市は車の通行を完全に遮断するつもりだ。歩行者と車が交錯せず、車路が減って歩道が広がるので歩きやすくなる反面、ドライバーは博多駅の屋上駐車場が使いにくくなる。 pic.twitter.com/J5QxlDf9ws
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さてここからが本題。完成予想パースを見ると、タクシー・送迎車の降車場とタクシー乗り場・タクシープールとの間を隔てていた半島状のスペースは消えるようだ。では、今そこにあるモニュメントはどうなるのだろうか。 pic.twitter.com/uKjoY2ePKS
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博多駅を長年利用しながら、今までこのモニュメントをじっくり観賞したことはなかったが、パースから消えていると気付いたとたん、何か大事なモニュメントかもしれない、撮影しておいた方がいいのではと思い、工事が始まる前に見に行ってきた。 pic.twitter.com/ZsVU2PxE2O
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モニュメントの形状はピラミッド型(四角錐)。一辺に尾ビレ状のパーツが付いて頂部に突き出ている。表面は陶板が貼られ、四面それぞれに絵が描かれている。周囲には水が溜まり、元は噴水だったようだが、私は水が流れている様子を覚えていない。 pic.twitter.com/hegbinow9K
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絵のテーマは博多の祭りで、四面のうち駅舎方向の二面は博多祇園山笠、道路方向の二面は博多どんたく。博多駅前のモニュメントとして真っ当なテーマである。写真は両者の境界を捉えたもので、右が山笠、左がどんたくの絵だ。 pic.twitter.com/I0sgHUVT2J
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モニュメントの傍らにある銘板。タイトルはストレートに「博多の祭り」。建立年の1986・S61は筑紫口駅前広場の再整備と同年だ。当時の市長である進藤一馬氏の名前の下に絵の作者が記されている。ああ、西島伊三雄(いさお)氏の作品だったのか。 pic.twitter.com/ISC9ZLw6VB
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西島伊三雄氏(1923〜2001)は福岡市出身の高名なグラフィックデザイナーで、グラフィックにとどまらず、文化振興や教育など多方面に功績を残された方である。
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ウィキペディア「西島伊三雄」 https://t.co/R3U39oVugG
福岡市民に最も馴染み深い西島氏のグラフィックデザインといえば、福岡市営地下鉄 空港線・箱崎線の各駅のシンボルマークだろう。写真は博多駅と中洲川端駅のシンボルマーク(駅名の右)。 pic.twitter.com/5ssOspqTON
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また、九州民のソウルフード、ハウス食品のラーメン「うまかっちゃん」のパッケージイラストと商品名も西島氏の仕事だ。
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福岡デザインアーカイブス > 博多が産んだ天才絵師 西島伊三雄 (3) https://t.co/P0wDSySE04
では筑紫口のモニュメントの絵を見てみよう。まず山笠の2枚から。舁き山の表(前側)と見送り(後ろ側)が描かれている。 pic.twitter.com/4JFtU0VLj4
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山笠の表(前側)。 pic.twitter.com/TG7OsWwq1b
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西島氏は童画家でもあった。その優しいタッチの中に山笠の躍動感も表現されており、素晴らしい作品だ。 pic.twitter.com/92J4raPyB4
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たくさんの人物を描きながら、ひとりひとりの表情や動作が実に生き生きとしている。 pic.twitter.com/WWGOHpfnmb
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見送り(後ろ側)。なお、2枚の絵は同じ舁き山の前後ではなく、別のヤマだ。よく見るとそれぞれ「一番山笠」「二番山笠」の文字がある。 pic.twitter.com/gLCAZHunEd
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見送りは後ろ姿(それも上半身だけ)という限定的な人物描写にならざるを得ないが、それでもヤマを舁く男達の力強さが伝わってくる。 pic.twitter.com/kjLZOd6oCf
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見送りの絵の左下に西島氏のサインあり。背中の文字は博多の「博」。 pic.twitter.com/V6hITM2zyC
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続いて博多どんたく(正確には博多どんたく松ばやし)。こちらは2枚とも隊列を前方から見た構図だ。上の隊列は伝統行事の博多松囃子で、下はお祭りとしてのどんたく隊。 pic.twitter.com/3k8QAXdQry
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博多松囃子のアップ。そういえば、どんたく隊は見たことがあるものの、博多松囃子は一度も実際に見ていないな。 pic.twitter.com/MPoVKMuWUS
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どんたく隊のアップ。着物で練り歩く伝統的な参加者はまだいるけど、三味線が弾ける人は少なくなったよね。 pic.twitter.com/RkuBWniDJX
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博多どんたくのもう1枚の方。 pic.twitter.com/Sn8Ry33wGr
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人々の笑い声が聞こえてくるようだ。本当にいい絵だな。 pic.twitter.com/QJHaL73ydL
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福岡では「どんたくは参加者以外の関心が低い」と言われていて、まあ私もそうなのだけど、この絵を見ると、そんな私でさえどんたく隊を生で見てみたいという気持ちが湧いてくる。もっとも、コロナのせいで山笠、どんたくとも中止になってしまったが。来年こそ再開できると信じたい。 pic.twitter.com/XOfV8JxA3r
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ところで、駅前広場の再整備でこのモニュメントの取り扱いはどうなるのか。検索したところ、福岡市のサイトで公開されている資料にこのような記述を見つけた。
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「平成26年12月議会第4委員会報告資料 博多駅筑紫口駅前広場再整備について」 https://t.co/m62AB8DVkd 注PDF pic.twitter.com/LYRw8JsQeW
2014・H26の時点で「モニュメントについては再配置」と決定したようだ。筑紫口駅前広場内の移動にとどまるのか、別の場所へ移設するのかは分からないが、いずれにせよ保存すると分かって一安心である。
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博多口駅前広場の再整備においても既存の立像は保存されたので、市役所としてモニュメント等を大事にする意識は持っているみたい。付け加えると、博多口の出入り口の上にも西島伊三雄氏が制作したレリーフが飾られている。これはJR九州が保存したのかな。併せてご覧いただきたい。 pic.twitter.com/T94KDERXsh
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参考記事:西日本シティ銀行 > ふるさと歴史シリーズ「博多に強くなろう」 > No.78 博多が生んだ天才絵師西島伊三雄 https://t.co/s79ifENe7W
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参考記事:
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FUDA 福岡デザインアーカイブス > 博多の天才絵師 西島伊三雄 https://t.co/P0wDSySE04
アクロス福岡 > 情報誌「ACROS」> 福岡クリエーター人物列伝 > 西島伊三雄(グラフィックデザイナー) https://t.co/sCX4h7yEyg
【注意】博多駅筑紫口駅前広場のモニュメントは、周囲のおよそ半分がタクシーの車路と駐車場に面しています。見学の際はタクシーの邪魔にならないようご注意ください。 pic.twitter.com/S2DgK8KhCj
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また、再整備工事が進むとモニュメントは見られなくなります。いずれどこかに移設されるとしても、しばらくは拝めませんし、移設完了がいつなのか分かりません。現状の見納めをしたい人はお早めに。
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