企画展「“さが” のための公共建築」01
佐賀県公文書館(佐賀市)で開催中の「“さが” のための公共建築 ─未来を描いた建築家たち─」を昨年末に見てきた。有名建築家が設計した佐賀県の施設における昭和モダニズム建築とその設計者に関する企画展だ。会期は2021/1/11まで。 pic.twitter.com/3FIbC37lmx
— タケ@ALL-A (@take_all_a) January 6, 2021
公文書館といっても単独の建物ではなくて佐賀県庁南館の中に入っている。Googleマップ https://t.co/EjwKrj8wCH
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しかも独立した展示室ではなく、公文書館事務室の半分が展示スペースで、もう半分は事務スペース。県職員が黙々と仕事をされている傍らで見学するという、こぢんまりとした会場だった。 pic.twitter.com/VMYn6D3LXg
公文書館の主催なので、展示物は佐賀県に納品された図面のコピーや県の広報誌に載った施設の記事が中心。それに説明パネルや模型など。手作り感溢れる小規模な展示ながら、企画した公文書館職員の建築愛が伝わってきて好感が持てた。会期末まであと僅かだが、行ける人はぜひ行ってほしい。 pic.twitter.com/3OqE4nt6ZX
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本展は佐賀県公文書館の所蔵資料展につき、対象は県立の施設とその設計者に限定される。建設時期は1950~70年代で、取り上げられた建築家は次の6名である。阿部美樹志、村野藤吾、堀口捨己、今井兼次、坂倉準三、高橋てい一、内田祥哉。
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本展で紹介された建築の多くは、佐賀市中心部のかつて佐賀城が建っていたエリアに集中している。公文書館も同エリア内にあるので、展示物と実作を徒歩で一気に見学できる。また、企画展の対象外だがお堀の隅に建つ黒川紀章氏が設計したホテルも図示しておく。 pic.twitter.com/rkO2BwvOG8
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紹介された建築物の中で最初に建てられたのは佐賀県庁舎(現 佐賀県庁旧館)だ。設計は阿部美樹志(みきし)、竣工は1950・S25。白状すると県庁舎の写真は撮っていなくて、画像はストリートビューのキャプチャから。 pic.twitter.com/y2ZNk3Fhx0
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佐賀県庁は1949・S24に焼失している。その翌年、しかも戦後初期にこのような鉄筋コンクリート(RC)造建築で再建したことに驚く。実は今まであまり関心を払っていなかったのだが、経緯を知って俄然興味が湧いてきた。写真はファサードの立面図。 pic.twitter.com/6TP5YrbVPD
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阿部美樹志は日本でRC造を確立した構造系出身の設計者だ。東京~万世橋間の高架橋など、当初は鉄道院で鉄道構造物の設計に従事した後、独立。阪急百貨店や神戸阪急ビルなど阪急関係を中心に建築設計も手掛けた。土木と建築の両分野で活躍した日本では珍しい設計者である。 pic.twitter.com/EYgAhpeEAP
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次は佐賀県立図書館。設計は内田祥哉 + 高橋てい一 / 第一工房、竣工は1962・S37。写真は広報誌『佐賀けんみん』より。グリッドプランを基本としつつ、2階閲覧室に大きな光庭を設けるなど、機能主義一辺倒ではないデザインがなされている。 pic.twitter.com/GuXwuhxogU
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佐賀県立図書館の1階と2階の平面図。1階を貫く広い通路はギャラリースペースを兼ねる。 pic.twitter.com/9GU9aAxbJ8
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佐賀県立図書館の南立面。1枚目:2005・H17。2枚目:2018・H30(手すりを撤去してウッドデッキが増築された)。 pic.twitter.com/genKq8iYWa
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【訂正】佐賀県立図書館以降、内田祥哉(よしちか)氏と高橋てい一氏(ていは青偏に光)は協働で佐賀県内に数件の建築を手掛けている。二人は逓信省繋がり。因みに阿部美樹志も鉄道院の前に逓信省に勤めていた。 pic.twitter.com/tuD43banK8
— タケ@ALL-A (@take_all_a) January 7, 2021
(昨夜の続き)県立図書館が竣工した翌年1963・S38、その隣に佐賀県体育館 / 現 市村記念体育館が竣工する。設計は坂倉準三。RC造による折板の壁にシェルの屋根という構造的に稀少な建築だ。写真は佐賀県庁新館の展望室から。 pic.twitter.com/f0D9Mswiyp
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市村記念体育館の模型。製作は、有名建築家の建築模型をいくつも担当してきた植野石膏模型製作所による。出展模型はこの1点のみ。他の模型も見たかったが、残っていないのだろうか。 pic.twitter.com/al9PoMMGPi
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ただ、この模型では特徴的なガーゴイル(雨水の吐水口)が再現されていない。アレは後で決まったのか? いや、この屋根形状はガーゴイルがあってこそ可能なわけで。単純に省略したのかな。 pic.twitter.com/15rZ6seYsE
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市村記念体育館の立面図。もちろんガーゴイルも描かれている。 pic.twitter.com/wi12cVUxAb
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なお、市村記念体育館という現名称は、リコー創業者で佐賀県出身の市村清がこの体育館を寄贈したことによる。既に体育館の役目を終えたこの建築が解体されずにいるのは、郷土の偉人が寄贈した経緯のためか? 写真は体育館の傍らに建つ彼の胸像。 pic.twitter.com/hcPatr1hQ8
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1970・S45、内田・高橋コンビの代表作と目される佐賀県立博物館が竣工する。プレキャストコンクリートによるプレグリッドシステムという、建築構法の専門家である内田祥哉氏らしい建築だ。十字状に突き出した部分が外観の目を引く。 pic.twitter.com/RjlZ7UvfsV
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佐賀県立博物館は明治維新100年記念事業の一環として建てられた。肥前国佐賀藩 / 肥前藩は維新を主導した薩長土肥の1藩。だからといって地域性や歴史性に頼っていないところに、モダニズム建築に勢いがあった時代を感じる。写真は片持ち部分で切った断面図。 pic.twitter.com/6AU0RwniPt
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『広報さが』に載った佐賀県立博物館の記事と模型写真。 pic.twitter.com/BYYoigJpl3
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あ、いま気が付いた。2018年の明治維新150年記念事業「肥前さが幕末維新博覧会」において、「すごいぞ!ボクの土木展」という維新からやや離れた意欲的なイベントが佐賀県立博物館で開催されたのは、博物館の歴史からも相応しかったのね。 pic.twitter.com/AWOv3cpR0e
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さて、冒頭で挙げた建築家のリストを読んで「佐賀に堀口捨己の建築があったの?」と思った方もいるだろう。私も「何だっけ?」とすぐに出てこなかった。正解は「清恵庵」という茶室である。 pic.twitter.com/8ISWUG8hog
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「清恵庵」は、前述した市村清の遺志で佐賀県立博物館の近くに1973・S48に竣工した数寄屋造りの茶室だ。生け垣に囲まれていて博物館側から外観はほとんど見えない。敷地や内部の見学には事前の申し込みが必要で、私は未見。 pic.twitter.com/wvuKU9FDza
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ただ、お堀の対岸から見ることは可能だ(私はこの構図も未見)。因みに、内田氏は東大の学生だった1946・S21頃に堀口氏の講義を受けている。戦後の混乱期で学生は3人くらいしかいなかったという。
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建築討論 > 建築家自邸シリーズ001 内田祥哉邸 おっくうにならない一生の課題 https://t.co/VuRkpQWcti pic.twitter.com/44YzfKHd9T
以上、「“さが” のための公共建築」展で取り上げられた建築のうち、かつての佐賀城エリアにある建築について述べた。長くなるのでここで一旦スレッドを区切る。次回は佐賀城エリア以外にある(あった)建築を紹介する。
— タケ@ALL-A (@take_all_a) January 7, 2021